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創作企画CSまとめ
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「坊や、存分に戦っておいで…」

「其方の背中は妾が護ろう」

「ああ・・・――妾の可愛い、愛しい坊や」

「どうか、武運の長久を」

 

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――彼女を亡くしてから一体どれほどの時間が流れただろうか。

 十三年……いや、もうすぐ十四年近くになるだろうか。ぼんやりとそんな事を考える事が増えた。住んでいた森も館も焼け落ち、ただただ必死に逃げた記憶だけやけに鮮明に己の中に残っている……。当時の彼女がどんな表情をしていたか。今では思い出せなくなってきた。

 噎せぶような煙と熱気、追手である人間の者たちが施す奇妙な術……後々、あれが陰陽術であった事を知った。姿を確認しただけで八名はいたはずの追手。幼かった俺には、彼らが何を求めていたのか、何故俺とシオンが狙われなければならなかったのか……まったくわからなかったが、”あの日”が俺とシオンの平穏を奪ったのは確かで。それはどうあっても変えられない事実だった。

 たまに、”あの日”の事を夢にみるのに。何度同じ夢をみようとも、あんたは決して俺の方を振り返らない。

 

「お早う」

俺の声かけに、おう、と短く返事をした彼は庭先を見つめる視線を動かす様子は無かった。早朝に訪ねた陰陽寮の彼の部屋。ここは異世界を閉じ込めたような姿をしている。窓は潰し薄暗く青白い光に包まれた空間は幻想的だった。聞けば、彼の妖力を凝縮して限りなく現実に近い幻覚空間を作っているのだと言う。部屋の床は無造作に剥がされ、底には水が溜まっていて池のようだ。幻覚だとは思えないほど、池も空気の質感もリアルなのだ。

「諸刃。」

名前を呼ぶとやっと、ゆっくりした動作で視線を寄越す。何か考え事でもしていたのだろうか、振り向いた彼の表情は眉を顰めていて、いかにも不機嫌な感情を隠さない。

「何か……あったのか?」

己の用件を伝える積りが、つい聞いてしまっていた。だが、諸刃は答えない。

「……おんしの用は」
「あー……次の任務の日取りが決まった。
 少しランクが高いので遠征になるだろう」
「そうか」
「何か必要なものがあれば……」

全て言い切らないうちに、要らぬと短く返事を寄越す諸刃。わかった、そう言ってから彼の部屋を出た。

 元々、俺が彼を陰陽寮へ連れてきたのだ。陰陽寮には、妖が踏み込むと容易には外に出る事の叶わない結界が張られている。そう、諸刃はここから外へは出られないのだ。結果的にこの地に彼を閉じ込めてしまったようで、ずっと気になってはいて。

 なあ、シオン……あんたと契約したくて陰陽師を目指していた俺が、今こうして別の者に縋っているだなんて知ったら。あんたはもしかしたら笑うのかも知れないな……。

 

 

 

 

 

 

 

 
 
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  淀夜と紫苑姫と諸刃の話。 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

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